私が映画の脚本家を目指していたことは以前記事に書きました。今でも映画やドラマを見ると「このレベルの脚本を書けるかどうか」という視点で観てしまいます。で、人気海外ドラマなんかを観てしまうと「あ、レベルが違うな」と思ってしまうわけです。
脚本修行時代、私は喜劇が好きで、特にトリックと謎解きがある脚本を好んで書いていました。中でも自分なりによく書けたと思う作品のことを、恥を忍んでひとつ。
それは“和歌”がキーになるトリック喜劇。ある殺された和歌の先生が時世の句に和歌を残して死んだ。殺人事件か?と思いきや、その和歌を解明していくと全て掛詞になっているようだ。読み解いていくと、それは「自分は薄毛で、人生イヤになる」と悲しんでいる内容だとわかる。他殺ではなく自殺なんじゃないの?という憶測が飛ぶが、実は過去に別れた恋人にだけわかる二重の掛詞になっており、自分が死ぬことでその人に残せるものがあった…。まぁ、ざっくりこんなストーリーです。
「和歌」「恋歌」「殺人事件」と聞くと美しい悲劇のようにも聞こえますが、まぁ、薄毛を気にして…という時点で100%喜劇です。私は当時三谷幸喜さんやジョビジョバに影響を受けたので、どうしてもコントとトリックものを書いてしまう。
また、一般的にも悲劇は泣くポイントは皆ある程度共通していて数パターンしかないけれど、笑いのポイントは人それぞれ。多くの人を笑わせることのできる脚本は、悲劇よりもより一層難易度は高いと考えています。
あとは、私自身がそんなにオプティミスト(楽観主義者)ではないだけに、せめて娯楽として観るものぐらいは喜劇的なものがいい、と深層心理が訴えているのかもしれません。